大事なこと
相続や葬式のことなど一度は親と話し合っておきたいと思っても、子どもとしてはなかなか切り出し難いものだ。
タイミングや切り出し方が不適切だったり、肩に力が入りすぎて不自然になると親子といえどもあらぬ誤解を招きかねない。
とあるアンケート調査の結果を見ると、「元気なうちにきいてほしい」(エンジニア・61歳)をはじめ、大半が万一の場合をある程度想定して前向きな意見を持っていた。老親を介護し看取る時期にさしかかっている世代だけに、子どもには苦労をさせたくないという思いもあるのだろう。「切り出し方とタイミング」についてのアンケート調査には、会社員、公務員、主婦など、職業や立場で比較的はっきりした傾向があらわれたのが興味深い。
酸いも甘いもかみ分けたサラリーマンタイプ
- 酸いも甘いもかみ分けたサラリーマンタイプ
日頃から友だち感覚で話し合っている親子関係ならあまりかまえる必要もないが、それでもわからないのが親ごころ。
「『結婚でも何でもお前の人生なんだから自由にしろよ』と言うから結婚式をあげないことに決めたら、『親の面目まるつぶれだ』とすっかりスネてしまった」(編集・32歳)に近いケースは案外多い。
こんなタイプは形式ばったシチュエーションは苦手。あくまでも自然にという感じで切り出しながらも、「親の思いを尊重したい」という姿勢だけはきっちり押さえておきたい。
何事にも『筋』を通したい役人タイプ
このタイプは状況やタイミングを一歩間違うと話がややこしくなる。食事中に団欒中に切り出すと「唐突にする話ではない。それとも何か事情があるのか」と勘ぐられることだってある。しかし、正月や誕生日、法事など区切りのいい場面や流れの中でなら比較的受け入れられやすい。
合理的&現実路線の主婦タイプ
家庭のことを現実的にとりしきっている主婦にとって、将来のことはいろいろ気がかりなものだ。機会があれば親のほうから話しておきたいと思っているので、子どもがきいてくれれば渡りに船。具体的な思いがきけるはずだ。
『後患の憂い』はそっときき出す
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人生も60年生きていれば、妻や子どもに言えない秘密のひとつやふたつあっても、それはそれ。
子どもだからといって差し出がましい詮索はおかど違いだ。しかしそれが、隠し妻や愛人、隠し子となればそう寛大なこともいってはいられない。
親の葬式にいきなり見知らぬ男や女が現れてお骨の取り合いが始まったり、養育費の問題や遺言状が出てきても本人に確認することはできない。また、これほど大きな問題でなくとも「実は10万円用立てたままになっている」という人がきて、言い張ることだってありえる。「うちの親に限って」などとみくびっていると、とんでもないドンデン返しが待っているかもしれないのだ。
だからといって子どもから唐突に「愛人はいますか」ときかれて、素直に答える親も少ないだろう。こうした会話には日頃の親子のあり方も問われてくるが、どうも疑惑がありそうだと感じたら、元気なうちに自宅以外の場所に誘い出して話を切り出すのが賢明。もちろん、自分が冷静さを保てる目的があればの話しだが、
①ことを荒立てるつもりはないこと(つまりここだけの秘密を厳守する)
②相続についてなどの親の思いはできるだけ尊重する
の2点を表明する。日頃から親にきちんと信頼してもらえているかどうかが試される場面だ。
またこの際、その場で性急に答えを求めないのが原則。デリケートな問題は何度でも時間をかけてじっくりと話し合う姿勢でのぞむといい。